水車

動力機関としての水車は紀元前2世紀ごろ、小アジアで発明されたといわれる。古代ローマの技術者ウィトルウィウスの著作で水車は言及されているが、滅多に使われない機械としており、奴隷労働の豊富な古代ローマ社会においては一般に余り普及しなかったようである。むしろ文明の中心が地中海沿岸を離れ中・西ヨーロッパに移行した中世以降に、安定した水量が得られる土地柄も相まって、急激にその台数を増やした。

1086年のイングランドの古文書では、推定人口140万人の同地に5642台の水車があったことが記録されている。また、動力水車の使用法としては、それまではもっぱら製粉に限られていたが、10世紀ごろから工業用動力としても使われるようになった。現在英語のmillが水車を表すと同時に工場をも表すのはこのためである。このような水力の極限までの利用が、ヨーロッパにおける産業資本主義発生の原動力となったのは疑いがない。